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No30. 戸田中央総合病院 医療安全管理室 医療安全管理者 宮園みゆり様


戸田中央総合病院で医療安全活動を進めていらっしゃる宮園様にお話を伺ってきました。


―安全対策の組織体制はどのようになっていますか?

安全管理の基幹部として院長直轄の医療安全管理室を設置し、その下に、医療安全部会、患者相談窓口、医療安全推進者(セイフティマネジャー) 会議および職場安全会議が置かれます。また、最高議決機関として医療安全管理委員会があり、必要に応じて医療事故調査対策委員会が開催されます。

【安全対策の組織体制】



医療安全管理室は医療安全統括管理者である副院長が室長を務め、専従医療安全管理者(宮園様)と 兼任医療安全管理者(医師:現在は副院長)および医療相談員(事務部)などで構成されます。 治療面など医師同士の方がスムーズに分析や対策が進む事もありますので、このような体制を取っています。主な活動は下記通りです。
1) 医療安全管理委員会、医療安全部会、医療安全推進者会議、職場安全会議、医療事故調査対策委員会の開催
2) インシデント・アクシデント報告の収集と分析
3) 医療事故の把握と対応および防止策の立案と実施
4) 職場安全会議フィードバック事例報告
5) 安全対策の立案と実施
6) 医療安全情報の発信
7) 院内巡視活動
8) 職員教育

1)各種委員会の議題の選定は医療安全管理室が担当します。インシデント・アクシデントレポートを元に事例を選定し、 実態調査を行い管理室で解析を加えた対策を医療安全部会にて話し合ってもらい、どのように現場で対策に取り組んで頂くかを提案します。
8)職員教育について、当院では6月と12月に職員教育として医療安全院内研修があるのですが、6月は医療安全統括管理者(副院長)が担当し、 12月は外部講師を招き講義を開催します。私が外部講習会に参加した際、ぜひ職員に講義して頂きたいと思う講師の方にはその場でご依頼をします。 医療安全養成講座や安全管理を担当されている方や、全国的に活動されている方に来て頂くので、良い研修になっていると思います。

尚、当院の医療安全管理体制構築における特筆すべき点として、臨床の実践者であり当事者になる可能性が高い看護部では、医療安全推進者 (セイフティマネジャー)を所属長に任命していることが挙げられます。これは、部署のトップ自ら安全意識を持ち、医療事故防止体制を構築するためです。
また、繰り返されるインシデントがアクシデントに繋がる可能性を予測、またはアクシデント発生時には、即、臨時的に職場安全会議を開催し、 発生した背景要因分析や部署や組織体制の問題点を抽出し、トップダウンではなくスタッフと話し合い解決策・改善策・事故防止対策が立案され 遂行されています。
所属長不在時でもアクシデント発生時には職場安全会議を開き、背景要因の振り返りと再発防止策が取られるようになったことは職員の安全意識が 浸透してきたと判断して良いのではないでしょうか。


―医療安全管理者の役割を教えてください

現場の医療安全推進者(セフティマネジャー)を統括する立場で、職域横断的に事故防止のためのシステムを構築し、病院全体の医療安全管理を 実務的に担当します。

専従の医療安全管理者の役割は下記8つです。
1) インシデント・アクシデントレポートの受理、報告と確認、事故内容の調査、原因の分析、防止方法についての検討・提言を行う
2) 決定事項などが履行されていない事例に限り、医療安全管理委員会の審議を経ることなく警告文書を発行する
3) 医療安全部会を開催し、部署間の調整を行い、医療事故防止策を立案し、医療安全管理委員会の議を経て医療安全NOTICEを発行する
4) 承認された防止策を、各部門セフティマネジャーと共に院内に周知、実施させる
5) 医療安全管理室の業務、即ち医療安全に関する研修・教育、院外からの情報収集と対応、院内巡視、業務評価を行う
6) 医療事故調査対策委員会の委員としてレポートの報告に基づき、事故原因の究明を行う
7) 各種医療安全に関わる会議に参加して議事内容を把握し、医療安全管理室にて情報の一元管理を行う
8) 医療安全管理者(兼任)は医師が担当し、医療安全管理者(専従)を補佐して主に医師の診療行為に関連した医療事故を取り扱う

医療安全管理者は基本的にインシデント・アクシデントレポートに基づく対応を行いますので、レポート提出推進の意識づけも行います。 医療の安全を確保するためには、インシデント(ヒヤリ・ハッとした出来事)やアクシデント(何らかの障害を引き起こした事故)の状況を充分に 調査分析し、再発防止のために必要な情報と認識を病院全体で共有することが重要です。この目的を達成するために、全職員に対してインシデント・ アクシデントが発生した場合はその報告書(レポート)の速やかな提出を要求しています。収集された報告情報は、関係した当事者の責任を追及する のではなく、医療業務における手順、情報伝達、連携、環境、管理等に関連したインシデントやアクシデントを誘発する要因が存在していないかの検証を行います。


―報告されたレポートの分析はどのようにされていますか。

戸田中央総合病院様『P-mSHELLモデル』 『P-mSHELLモデル』を採用しています。ただし、全ての事例に対しこの分析を行うのは時間的にも難しいものがありますので、医療安全管理者がレポートの 事象を確認しスタッフのレベル及び部署の事故再発防止に向けて、今後にぜひ生かして欲しい場合に促します。「P-mSHELLモデル」は、本人の心身状態、知識レベル、取り巻く環境、部署の管理体制など全てを分析していますので、 事故を起こした当事者の責任を責めることはありません。分析を行った結果、例えば薬剤の知識が足りないと感じた場合は、その日に関連文献を読むよう指導したりしています。
事故事実(人、環境等)に対しどこが良い/悪い、どこが重要、ではなく単純に事故の「分析」を行うことで、二度と同じインシデント・アクシデントを起こさないために、 事故の振り返りと背景要因分析により今後の再発防止対策を講じています。


―最近の転倒・転落事例の発生件数はどのように推移していますか?またどのように対策を取られていますか?

戸田中央総合病院様『せん妄について』 全体の件数は大体横ばいです。当院ではレベル1〜2の方の事故が多く、そのほとんどが居室、トイレで起こっています。また、認知症の方やせん妄による事故もあります。 せん妄については鎮静(RASS-Richmond Agitation-Sedation Scale-)評価を用いて、投薬する薬剤や採用する対策を決めたりします。主治医が常時いるわけではありませんので、 評価基準をおくことで非常勤、当直の医師にも標準化された対策が行えるようにしています。また、入院時に患者様とご家族にせん妄やそれに関連する危険、 起こった場合の対策についてパンフレットを用いて説明します。そうすると、患者様自身も「あ、私“せん妄状態”になるかも…」と、危険やその後の対策について理解されることもあるんです。尚、せん妄は薬剤だけではなく、入院から1週間程は環境が変わることによりよく起こりますので、スタッフにもそのように説明をしています。 この場合、ご家族が側にいらっしゃると落ち着くことが多いので、そのように対応をお願いすることもあります。加えて、転倒・転落対策のリーフレ
ットとDVDをご覧頂き、その危険について認識頂きます。
物的対策はアセスメントスコアシートを元に、ストッパー確認やベッド柵設置、ステーションに近い部屋を選択、離床センサー等介護用具の検討を行います。


―離床センサーはどのような目的で導入されていますか。

患者様の体動を素早く察知し、転倒・転落を予防するために導入しました。また、行動を抑制することなく、患者様の安全性を高める対策としても評価しています。


―離床センサーをいつ・どのような対象者に使用するか、適用基準はありますか。

入院時、入院3/7/14日目、事故発生時に記入する「転倒・転落アセスメントシート(成人/小児用別)」結果において、 危険度U、Vの方に離床センサー等の対策器具を検討します。また、以下条件に該当し、看護師の介助や見守りが必要と判断されたが、説明しても自力で動かれる方やナースコールで移動を知らせて頂けない方にも使用します。
1) 運動障害がある
2) 排泄に問題がある
3) 睡眠薬、利尿剤、下剤、筋弛緩剤、抗精神病薬を使用している
4) 自立心が強い、遠慮深い
5) 発熱、貧血、眩暈などの症状がある
6) 過去に転倒・失神・眩暈・痙攣発作などを起こしたことがある

尚、使用開始と終了は担当看護師の判断だけではなく、ご家族、担当医師、コ・メディカルの意見もヒアリングし決定します。


―数種・複数台の離床センサーを導入されていますが、どのような運用、管理をされていますか。

センサーの種類(起き上がり、床敷き、クリップタイプ、トイレからの立ち上がり)とその報知タイミングや特徴、どういった患者様に有効か、 故障時の対応、管理方法などをまとめた写真付のマニュアルを作成しています。管理は各部署にて行い、管理責任者は現場の状況により定数も随時見直します。 当院では、ベッド上で起き上がりのタイミングを知らせるセンサーがよく活用されています。 報知タイミングが早く、センサーの設置が患者様に気づかれにくい点から多用されていると思います。


―離床センサー運用上の課題はありますか。

離床センサーを使用することで安全が得られる反面、電源の入れ忘れなどが起こることがあります。転倒・転落事故を防ぐ器具ではなく、 患者様の動きをお知らせするものだという認識を持つことが大切です。センサーは1つのツールであり、あくまでも見守りや巡回をした上での補助的な対策です。 また、現在ナースコール連動型を使用しているため、通常のナースコールと重なる事も多く、業務が煩雑化する面もあります。今後は、どの患者様にどういったセンサーを使用する、 あるいは使用しないといった選定と適用の標準化が必要になってくるかと思います。


―テクノスジャパン、離床センサーへのご要望はありますでしょうか。

今後の製品開発には、医療機関や高齢者施設など実際に使用する現場の要望・意見を取り入れていただきたいですね。 それによって、現場のニーズを満たすより良い製品ができるのではないかと考えます。
また、医療や介護の業界だけではなく、一般の方に向けて、高齢化や認知症、せん妄などで引き起こされる可能性の高い転倒・転落事故への対策の必要性や、 事故防止に向けた医療機関や高齢者施設、厚生労働省の取り組みなどを発信して欲しいと思います。

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