No.19 第6章 事業向き製品開発
投稿日:2010/09/27
自社で精魂込めて作った製品でも本格的な事業に向く製品と、そうでない製品がある。
他に本業があり、片手間や社長の道楽でやるのに向いた製品もある。
しかし、開発製品に「全てを賭けて」事業展開する場合には「製品を選ぶ」必要がある。
その地方だけで勝負するのと、日本全土で勝負するのと、世界で勝負するのと、では自ずから製品に違いがある。
・・・「事業として成り立つ製品」、私は、これを「事業向き製品」と呼んでいる。
何とか事業向き製品を作りたい! このことを念頭においていつも考えていた。
以下それについて書く。
新製品開発に当たって、「これは売れないだろう」と思って取組んでいる人は居ない。
誰でも「これは売れる!」と思って開発している。
しかし、実際には売れる物と売れない物に分かれる。
その違いは何だろうか?
また、そこにどのような差があるのだろうか?
当然であるが私も、「売れる物を作りたい」と思って取組んできた。
結果は以前に書いた通りで、作っても作っても売れないし、メディアが騒いでも売れない!
売れる物と売れない物を選定する客観的なモノサシや基準などはない。
結局は実際にやってみないと分からないと思う。
これはメーカーの立場で書いている。(自社製品を製造して販売するメーカー)
(従って、他社製品を仕入れて販売する業種の場合は異なる)
実際にやってみて分かったことだが、製品を売るためには次の3点が重要である。
1.売る仕組み作り
2.売るタイミング
3.製品(商品)の告知方法
上記の概略を説明すると:
1.売る仕組み作り
これは「どうやって売るか?」と云うことである。
製品には「性格」があって、他で成功している方法を真似ても、上手くいかない。
私が開発した製品が永い期間売れなかったのは「販売に関する認識が甘かった」からである。
即ち、直販なのか? 代理店販売なのか? 委託販売なのか? OEM供給か? ・・・ここに迷いがあった。
結局は自分一人で決断しなければならないことだが、非常に悩み迷うところである。
何しろ「これで決まる」のであるし、後で修正が効かない。 ・・・相手の商権・商道徳の縛りが出てくるのだ。
とにかく「仕組み無し」には売れない!
・・・苦し紛れに、個別の少量取引には、絶対に手を出すべきではない。
要するに、「販売チャンネル構築」が全てである。
2.売るタイミング
製品が売れるのには「丁度良いタイミング」があると思う。
時期は早くても遅くてもだめであり、世の中の時流と合わなければならない。
・・・時流を読み違ったために、優秀な製品が、どれだけ多く市場から消えていったことか!
例えば、弊社の「バイオスイッチMCTOS」を昭和40年代に出しても、誰も注目しないし絶対に売れない。
・・・重度障害者のコミュニケーションに目を向ける社会の成熟土壌が必要なのである。
また、弊社の「離床センサー」を昭和50年代に出しても、絶対に売れない。
・・・対象者も無く、従って需要が無いので売れないのである。
売れるためには「認知症老人」の激増が必要なのであり、これは時流である。
しかし、ここで最も重要なことは「他社より遅れてはならない」ことである。
・・・絶対に「先発メーカー」でなければならない!
「いつ出すか?」、ここの「読みきり」が実に「神業の如く難しい」のである。
要するに「自分の勘」を磨くしかない。
3.製品(商品)の告知方法
作っても売れないのは買う人が知らないからである。
つまり、製品を売るためには、できるだけ沢山の人に「素早く」知らせなければならない。
案外疎かになるのが「告知」すると云うことである。
告知方法は製品により異なる。
・・・零細・ベンチャー企業は告知に金がかけられない。
新聞・雑誌の広告やTVコマーシャルに金をかけられないのである。
以前に書いたが、私は「展示会」を告知に選んだ。
「エンドユーザーとディラー」これらの人に、どれだけ短時間で、どれだけ多数の人に、知らせるかで決まる。
・・・方法は色々あり、製品によって方法が異なる。
要するに人を頼らず「自前で」独自の方法で、エンドユーザーに知らせることである。
何が売れるか?とにかく「やってみなわからん」と書いたが、ここで最も重要なことは「資金」である。
製品開発に湯水の如く金を使う訳にはいかないのである。
新製品開発云う美名の下、際限なく資金を投入して、経営破綻により消えて行った企業は数知れない!
開発に酔い!社長の道楽に誰もブレーキがかけられず、空中分解する例は枚挙に暇がない。
・・・もう少し金を突っ込むか? ここら辺りで手を引くか? この判断が実に難しいことである。
要するに、経営に致命的な影響とならない「投資ラインの設定」が必ず必要である。
・・・これは社長にしか出来ない判断なのである。
製品は、とにかく出してみる。
あれこれ考えても売れるか否か、分からない。
このようにして「何が売れるか?」模索し続けることが「モノ作り企業」経営の醍醐味だと思う。