『風の見える朝』

No.37 何も変わっていない!

投稿日:2003/02/12 投稿者:大西秀憲
ドッグイヤーと言う言葉を聞かれたことがあると思います。
IT関連の世界で使われるもので、それほど時間が速く過ぎるという例えである。
(犬は人間の1年に約6歳年をとる)
つまり、技術革新やビジネスサイクルが目まぐるしく変化する状態をいう。
昔のように「10年一昔」と言って、10年を区切りとするような変化ではない。
パソコンなどは買えばすぐに古くなるし、通信も激変している。
とにかく、ビジネスの世界では「日々是新」である。

ところが、最近「明治時代」にタイムスリップする経験をした。
「日々是新」は一般市場の状況であり、「お上」の世界はそうではないらしい。
変化しないことが当たり前の世界だ!と言われたら目まいがした!
特に「電子政府」の実現に邁進しているものと思っていただけに大ショックだ。
いきさつを紹介する。

会社法人(株式会社、有限会社)を設立する時には必ず「定款」を作成する。
その定款に謳うのが「事業の目的」である。
私は現在の会社を設立する時(10年前)には全て自分で事務処理した。
その時に、一番もめたのは「事業の目的」の字句である。
自分には新しく事業をスタートさせる理想があった。
・・・つまり、何をやりたいかはっきりしていた。(How toではない)
それを迷わず、定款に書いたら、登記当局で拒絶された。
・・・曰く、それは認められないから、この中から選べ!
見せられたマニュアルのようなものには「古臭い字句」が並んでいた。
その中を全て探したが、私の思いにあてはまるものは無かった。
その登記官殿は無表情で言った、「これ以外は認められない」と!
それで私は渋々、「当たらずとも遠からず」で選んだのが、現在の目的である。
・・・見る度に不満を持っている。

そして10年目に又同じ経験をしたのである!
会社を1つ作ろうと思い年始から動き出した。
当然、今からスタートする会社であるから斬新な事業の目的を考えた。
斬新と言っても、テレビや新聞では連日のように見聞きする字句である。
つまり、その言葉は解説無しで通用する一般用語になっているのだ。
だから私が本当にやりたい内容を目的としてストレートに書いた。
ところが、ところが、ところが、拒絶されたのである。
そして、過去の字句集により「この中から選べ」ということである。
登記官が理解できないもの(つまり過去の例)は、認められないと言うのだ。
一方で国を挙げて、ベンチャー支援である。
          先端技術指向である。
          創造的新産業育成である。
・・・これらに共通するのは、斬新な発想である。過去の真似では無い!!
ところで、登記を担当する役所は言うまでもなく国の機関である。
しかも、法人をスタートさせる場合に一番に世話になる機関である。
一体、国として、どちらが本当なのか?
見たらゾッとするほど陳腐な字句が並び、明治を思い出させるような字句集。
これから選べば通る。・・・とは何事か!

結局、10年前と何にも変わっていないことを、思い知らされた。
「バイオエレクトロニクス」はダメ。 「生命工学」=OK.
福祉機器=ダメ。 福祉用具=OK.
環境機器=ダメ。 市場調査=OK.しかし、技術調査=ダメ。 等。
面白いのは、電気製品の輸入=ダメ。しかし、電気器具の輸入=OK.
・・・皆さんどう思われますか?
結局、役所が時代の流れに取り残されている状態です。 
ベンチャーの事業の目的ぐらい、自由に表現させたらどうですか?
責任は、全て自己責任なのだから・・・
役所が認めた陳腐な字句(事業の目的)を見ると気分が悪い!

そこで一句「明治は遠くなりにくい」

モノづくりの原点…それは「人と社会を結ぶ応用技術」

応用技術で暮らしを支えるモノづくりを。
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