『風の見える朝』

No.5 とんど

投稿日:2000/12/26 投稿者:大西秀憲
正月がやってきた。 
子供のころ冬休みになると「とんど」の準備は子供の仕事であった。 
1月14日の夕方に火を焚いて、餅を焼いて食べるのである。
3mも積み上げた木に火をつけるので、ものすごい勢いで燃えた。 
何十人もその火にあたり、子供は書初めを燃やした。 
大人は正月の飾りや松などを、「とんど」で燃やした。 
(だから、とんどの火は神聖なものとされたのであろう) 
焚き物が燃え尽きると、沢山の火ができた。 
その火で、正月の餅を焼いて、醤油と砂糖のタレにつけて食べるのである。 
この餅が実に美味かった。 
さて、良い火を沢山作るために(大勢の人が餅を焼くのだから)子供たちは 
他の地区と競争して、沢山の木を集めて「とんど」の準備をしたのだ。 
2学期が終わるとすぐに子供全員が毎日山に行き、木を集めて持ち帰るのである。
それは1月に学校が始まるまで、毎日続いた。 
小学校1年生から6年生までの子供全員が協力したのだ。 
大人の手を借りることは絶対になかった。 
上級生が実に鮮やかに段取りをして、下級生に分担を決めて指示をしたのだ。 
ナタや斧やノコギリを使った作業であるから、危険はいっぱいあった。 
しかし、例え怪我をしても、誰も文句を言う者はいなかった。 
伝統の作業を通じて、子供の世界に「秩序」があった。 
小さい者や弱い子供には、ちゃんと上級生が、見合う仕事を分担させた。 
もちろん、「いじめ」などはなかったのである。 
しかし、上級生の指示は実に厳しかった。 
このようにして、子供たちは地域の様々なことを上級生から学んだのである。 
今、「とんど」はどのようになっているか? 
子供たちは、何もしないのである。 全て大人が当番でやるのだ。 
勉強がある!塾がある!習い事がある! 子供にやらせると危ない!! 
色々な理由をつけて、子供たちには何もさせない!
(子供たちだけではできない! と言う人が多い)
怪我をしたら、どうするんだ!と言う人がいる。 
本当にそうだろうか? 
地域の中で、子供の仕事はあるはずである。 
上級生を含めた子供の世界で学ぶことは多いはずである。
第一、子供の「秩序」はいつ、どこで学ぶのか? 
コンピュータゲームやパソコンの遊びからは、絶対に学べない!! 
いつから日本は、こんな国になったのだろうか?

モノづくりの原点…それは「人と社会を結ぶ応用技術」

応用技術で暮らしを支えるモノづくりを。
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