『やってみなわからん!』-私の体験-

No.5 第2章 会社設立

投稿日:2009/07/27 投稿者:大西秀憲
前章では満23年間勤務して退職するまでのサラリーマン時代における技術習得について書いた。
(退職日は平成5年1月31日であり、年齢は45歳であった)
因みに退職願を提出したのは平成4年12月14日であり、和紙の巻紙に毛筆で丁寧に書いたのである。
・・・大石率いる赤穂浪士が江戸の権力に対して「播州人の男の意地」を実行したのが「12月14日」である。
私はこの日に合わせ、東京人の経営陣に強烈なメッセージを送ったつもりであったが、誰も気付かず無視した。
あろうことか会社は内偵まで始めたが、最終出社日の1月29日まで、ついに上司との「面談」はなかった。
ともかく退職すると、こんなに気が楽になるのかと思うほど「気が晴れ晴れ」としたのが不思議であった。
1.設立
2月1日は月曜日であったが、会社に行かなくても良いと云うのは、こんなにも楽な事か!と実感した。
そして私はこの日から「会社設立」の準備を開始した。
先ず、本屋に行って「小さな会社の作りかた」という本を¥980で買った。
そして詳細に本を読んだ結果、設立の「手続き」は自分で充分できると判断した。
姫路に「青丹堂」という文具屋があり、そこに行って聞くと「会社設立セット」があることが分かり、購入した。
要するに「定型用紙」であり、必要事項を記入するだけで全て完成する用紙集なのである。
ここで困ったことに直面した。
それは「定款」作りと「会社所在地」である。
定款は会社の憲法であり、そこには「何の事業をするのか」書かなければならない。
ところが、この時点では未だ何をするのか、決めていなかったのである。
また、たとえ決定していたとしても、自分が決めている事業名称と「お役所」名称は異なり、自由に使えないのである。
・・・定款に書ける事業名称は、お役所が予め決めているリストの中から選らばなければならない。
私はそれを知らずに「メカトロニクス」と書いていたため、書き直しを経験した。
ベンチャー企業の設立を奨励する一方で事業の名称を制限する事実があることはお役所仕事の悪い典型であろう!
ともかく私は指定されたリストの中から適当に選んで「会社の事業内容」とした。
・・・従って、実態とは異なるのである。
もう一つの会社所在地についてであるが、これも現実的な問題である。
最終的に会社は「法人登記」をしなければならない。
この場合、住所表記をしなければならないが、私は郡部でなく「姫路市」で登記しようと決めていた。
そこで、私は20年以上の付き合いがある「岩田さん」が所有している旧社屋が、空家になっていることに目を付けた。
私は金が無いので、格安な家賃にて貸してもらえるよう、お願いするつもりであった。
そして、一席を設けて同氏に依頼すると「あんたが必要なら使え、金は要らん!」と即座に云われた。
ありがたい言葉であった・・・
このようにして、2階建て、倉庫付き、駐車場付き、の充分広い社屋を手にした。
・・・ここが創業から3年間、住所とした「姫路市南条高田384番地」である。
(因みに、タダほど高いものは無く、また甘えの気持ちが許さないので、自分で家賃を10万円と決めて支払った)
会社の登記は「法務局」でするが、その前に「公証人役場」での手続きがある。
・・・45歳になるまで聞いたことがない名称であった。
法人設立の発起人議事録と定款を持参して認証を受けるのであるが、これに4万円の手数料がかかる。
何のためにある役所で、なぜ?金を払うのか?、さっぱり分からない経験であった。
しかし、ここの関門を通らねば、会社設立はできない仕組みなのである。
ともかく、色々と当局で聞いて指導を受けながら、無事に法人登記が完了した。
これが「株式会社テクノスジャパン」の会社設立日である「平成5年3月8日」である。
通常、司法書士に会社設立を依頼すると、約20万円かかるが、自分ですると5~6万円でできる。
そして、何より行政の仕組みがよく理解できるので、もしこれから会社を設立する人には自分ですることを勧める。
・・・設立の時、私は一つ失敗をした。 それは事業年度末を3月31日にしたことである。
このため、テクノスジャパンには「第1期」として「24日間」が存在するのである。
・・・実質的な創業は(創業パーティを行った)平成5年4月6日である。
ここでもう一つ重要なことを書く。
それは「社名」である。 誰でもそうであろうが、私も散々考えて、一番頭を悩ませた課題であった。
自分で自由に付けられる名前だが、途中で替える訳にはいかず、歴史に残るかもしれないのが社名である。
姫路の西北に「西播磨科学公園都市」、通称「テクノポリス」がある。・・・現在「スプリング8」で世界的に有名である。
ある日、この文字を見て、ふと「テクノス」の名前が浮かんだ。・・・要するに「ポリ」を取ったのである。
「テクノス」 良い名前だ!と思った。
ところが、それから暫くして新聞を見て「愕然」とした。 ・・・テクノスと云う時計会社の大きな広告が、そこにあった。
同じ名前では面白くない! そこで考えた結果、テクノスに「ジャパン」を付けてみた。
「テクノスジャパン」!良い名前ではないか!! このようにして社名が決まった。
会社設立準備と平行して、私は「簿記」の勉強を開始した。
なぜなら、会社の経理は自分ですることを決めていたからである。
私は「経理知識」はあったが、「簿記の実務」はしたことがなかったのである。
そこで、ビデオ解説付きの簿記講座テキストを入手して勉強を始めたが、全く理解できなかった。
3月中に覚えねば、4月から経理が出来ない。
しかし、ビデオを何回見ても、テキストを何度読んでも、よけいに分からなくなっていった。
そのように悩んでいる中、ある日「ふと」簿記の極意が頭に浮かんだのである。
それは、まるで深く濃い霧が瞬時に消えたような感じであった。
それ以来、私は簿記の主要実務「仕訳」に全く困らなくなったのである。・・・これは神に感謝したい!
・・・テキストはわざと分からないように、難しく、難しく、勘定科目を記憶するように教えているのが間違いである。
ビジュアル的に捉えると、極めて簡単であり、私なら素人に2週間で簿記実務を教える自信がある!
経理の他に不可欠な業務が「給与」計算である。
要するに控除項目の「社会保険」と「源泉所得税」の計算をしなければならない。
これは中々面倒くさい事務で、控除したものは「納付」しなければならない。
関係する役所は「社会保険事務所」、「労働基準監督署」、「ハローワーク」、「市町村役場」、そして「税務署」である。
私はこれらの役所の届出、事務処理一切を自分でやった。
自分でやると「しくみ」が実によく分かる。
また「税」関係の届出は「市役所」、「県」、「税務署」にしなければならないが、これも自分ですると「しくみ」が分かる。
従って、研究開発や製造などの主要業務のほか、以上のような「事務」業務をすることで経営全体が把握できる。
私は事務要員を雇用する資金的な余裕が無かったので、経理・総務の事務一切を10年間自分で行った。
確かに主要業務を行いながら、事務業務をするのは大変であるが、利点も多い。
例えば「税務調査」(要するに税務署の調査)の時などは、(自分が全て分かっているから)一人で対応できるのである。
また、事務要員を雇用した時には、全て自分が指導もチェックもできるのである。
・・・これから会社を創業しようと計画している人は、ぜひ自分ですることを勧める!
以上の準備をして平成5年4月6日に、ささやかな「キックオフパーティ」を行って創業をスタートした。
私を含め「4人」でのスタートだった。
要するに「真っ白なキャンパス」に「描く」準備ができたのである。
翌日から張り切って仕事を始めたが、一本の電話も一通の郵便物も無かった。
それは当然であった。 ・・・何をするか? ビジネスモデルを決めずにスタートしたからである・・・
「何をするか?」決めるまでについては次号で書く。

モノづくりの原点…それは「人と社会を結ぶ応用技術」

応用技術で暮らしを支えるモノづくりを。
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