No.26 『 公私混同 』 と 起業
燃えるようなエネルギーを持った若い人が大いに起業すべきだと願っている。
・・・なぜなら、世の中で「起業家ほど尊い者は無い」といつも思っているからである。
起業したからと云って、生き残る保証はどこにもないが、新規企業が増えないと経済は沈滞する。
やはり「国の屋台骨は産業」である。
産業の中でも、中核になるのは製造業であり、サービス産業や飲食業がいくら発展しても国の力にはならない。
なぜなら「無から有を生み出し」地球規模で勝負できるのは、製品しかないと思うからである。
従って、これからの若い人にはどんどん「製造業で起業」をしてもらいたいと願っている。
ところが日本の起業数は非常に少ないのが現状であり、これが問題である。
なぜ?日本人は起業しないか? これについて「私なりの独断・勝手な解釈」があるので、それを記述したい。
それは、一言で云えば日本国が「公私混同」しているからである。
これがなければ、もっともっと多くの人がチャレンジするだろう!
では、その公私混同とはどのようなものか?
日本では「個人」と「法人の代表者」を混同してるのである。・・・これを正に「公私混同」という。
・・・本来、これは「別物」である。
次に「公私混同」3つの例を挙げる。
① 税法・商法違反時
企業(法人)が税法や商法で違反した場合、地検からの呼び出しは代表取締役の「個人住所」に届く。
・・・会社の代表取締役(通常は社長)宛には発行されない。
これは、「○○の商法違反事件について聴取するので○○に地検に出頭せよ」との文面で届く。
・・・例えば取締役の重任届けを、うっかり忘れていると、ある日くだんの「呼出状」が届くのである。
そして、出頭して科料・罰金が決まり、個人が納付することになる。
このポイントは:
◎ なぜ?会社のことであるのに個人宛に通知されるのか?
◎ なぜ?個人である者が呼び出しを受け、科料・罰金を科せられるのか?
◎ なぜ?会社の事だのに、個人が罰金を納めなければならないのか?
これでは個人も法人もなく同一であり「ミソもクソも一緒」にして、公私混同も甚だしい!
つまり「法では個人も法人も同一で、完全に公私混同している」のである。
② 連帯保証人
例えば、会社が車をリース契約する場合がある。
また、コピー機をリース契約する場合がある。
この場合、会社の代表取締役の名前と法人印を押印するのは当然である。
しかし、契約書には別に代表取締役の「個人連帯補償」が必要である。
・・・自宅住所と氏名、そして「個人実印」を押印しなければならない。・・・場合には印鑑証明が必要。
社長(代表取締役)の自宅で、私的に使うのであれば理解できるが、会社で使う物である!
・・・なぜ?個人補償(連帯責任)しなければならないのか??
要は、会社が払えなくなれば「個人から取る」ためである。
「公私混同」甚だしいではないか!!
③ 借入時の個人資産
銀行から借入する場合、個人資産を列記する書類を提出しなければならない。
つまり、「私は現預金が○○円、株式が○○円、不動産が○○円、合計○○円の財産がある」との申告。
端的に云えば、この申告財産によって銀行との取引枠が決まる。
特に、事業が未だ軌道に乗らない時の状態に於いては、非常に厳しい査定を受ける。
ここに「永遠の矛盾」、借りたい時に借りらず、が起きるのである。
要は、「担保が無ければ、金は借りられない」のである。
・・・最大の矛盾は、起業初期の頃、担保は「個人資産」なのである!
「公私混同甚だしい」ではないか!
以上、具体的な事例を記述したが、まだまだ事例はある。
結論を云えば、日本はがんじがらめの「公私混同」で、オーナーの起業者(代表取締役・社長)を徹底的に苛める。
一方、日本の国(メルヘン国)では、きれい事・絵空事が空気を作り支配している。
◎ 曰く、「公私混同」はいけない!、特に会社のトップである社長は厳しく「公私混同」を律しなければならない!
◎ 物の本にも書いてある、即ち、社長は決して「公私混同」してはならぬ!と。
これは一体全体、どう云うことであろうか?
法は、大いに「公私混同」している。
一方、精神論では「公私混同」を厳しく律している。
以上は永年、私の疑問とするところであった。 ・・・大いに色んな角度から考えた
そして得た結論:
「法の実体を受け入れ、それを援用する」という事である。 ・・・何しろ法がやっていることだから。
・・・極最近、このように考え方を変えた。
前のコラムで「理不尽」について「愚痴」を書いたが、これも一連の事である。
政府も行政も、しきりに起業・創業を勧めている!
しかし、肝心要の「法による公私混同」や個人保証を撤廃しなければ、起業者は二の足を踏む!
政治家や公務員が考えるより、起業は大変なことで、大きなリスク(賭け)が伴う。
文字通り「命を賭けた」必死の取組みが続くのである。
せめて、法や保証や金融で「大いなる緩和」をしなければ、人生賭けて起業する者は多く出ない!
・・・サラリーマンは会社が倒産すれば「職」を失うだけであり、個人の家庭や財産は無傷である。
しかし、起業者(代表取締役・社長)は、多額の個人負債を抱え、自己破産か禁治産者か自殺で人生を終える。
これだけの大いなるリスクを求めるのだから「法や倫理で縛る」のはよくない。
特に、海外の若い企業家達と対等に勝負する上では、日本の旧来の縛りは開放しなければ勝負にならぬ!
自由にやらせたら良いじゃないか!
「白いネコでも黒いネコでも、ネズミを捕るのは良いネコである」
ある程度軌道に乗った「起業者・創業オーナー」から「業績が良いから罰金を取る」というのは理解できない!