No.48 製品進化の方程式
私は物創りが好きで、ささやか乍ら現在でも「物を創っている」人間である。
「天の声」により、直ちにサラリーマンを辞めて、「モノづくり」の会社を立ち上げたが、その後がいけない!
神様は、そのお告げで「お前にしか作れないモノを創れ!」とだけ言ったが、何を創れとは云わなかったのである・・・
「何を作ればよいのか?」
ここから長い「自問自答」が始まった。
最初に作ったのは「重度障害者意思伝達装置」である。
作るには作ったが、いつもいつも頭の中には「こんな物を(製品として)世の中に出せるのだろうか?」との思いがあった。
もっと、「ちゃんとしたカッコいい物を創りたい」との思いを、いつも意識していたのである。
・・・この思いは「自社製品」を開発・製造している人が持つ、共通の思いのような気がする・・・
このような「モヤモヤとした思い」を打ち破り「目からウロコ」の体験をした!!
これによって、私は「進化の方程式」を会得(悟り)したのである。
・・・誰にも云わなかったが、これは私にとって「極めて重要な節目」であった。
体験は偶然にも二つの会社見学によるものである。
一つは「シスメックス株式会社」
もう一つは「グローリー株式会社」である。
もし、私がこの時期に、この見学機会が無ければ、まだまだ長い間、悶々としていたに違いない!
それ程、私にとって「インパクトが大きかった」のである。
私が見た物は何か?
両社の「製品展示ルーム」の見学をした時の事である。
展示室には「歴代の製品」がきちんと、暦年別に展示されていた。
その中で「一番最初の製品」を見た
正直「なんじゃこれは!」と思った。
躯体は鉄・鋳物の塊り、ダサく、色はダークグレー・黒で、コネクタやスイッチ類は「ゴツく」異様にアンバランスだった。
「これが製品か?」と思った。
ところが、暦年順に見ていくと「だんだんと年を追う毎に、カッコ良くなり」、最新モデルは「唸るほど綺麗」であった。
私は、それらを「行きつ戻りつ」見ていて、「そう云うことか!」と気が付いた。
製品は「進化するもの」なのだと!
誰でも、どんな立派な会社でも、最初に作る製品は「ダサい」
・・・ダサい物を作ろうとしている訳ではない。
(そんなこと分っているワイ!と云う人が居るかも知れない) ・・・しかし「本当に分っていますか?」と問いたい。
分かっていたら「なぜ?あなたはやらないのですか?」と、私は言いたい!
それは、「本質を悟っていない」のです。
実は、分かっているつもりで、逃げているだけなのです・・・
要は「最初に形にすることが重要なのだ」と気が付いたのである。
そして、形にしたら「製品として市場に出すこと」なのである。
その評価は「市場がしてくれる」のである。・・・作った者がするのではない!
要するに「使う、使わない」、「売れる、売れない」は、市場が決めることである。
従って、製造者は「とにかく市場に出す事が重要」なのである。
製品を市場に出したら、市場の声で「次々と改良のヒントが得られる」のである。
この声を参考にして、弛まぬ「製品改良」をして行けば、やがて「素晴らしい製品が生まれる」のだ!
私は「この事に気が付いた」のだ。
それ以後、私は迷わなかった。
とにかく「どんなダサい物でも、とにかく作って世に出した」のである。
中には格段に進化した製品もある。
現在、その製品数は百数十を超える。
ここで、私に重要な「進化方程式」を気付かせて頂いた、二つの会社を紹介する。
1つは、「シスメックス」という会社である。
あまりにも有名だから、その道の人は誰でも知っている会社である。
本社は神戸市にある。
「血液検査の装置」で世界のトップシェアを持つ世界企業である。
関連会社は「国内に11社」、海外には何と「47社」を持つ世界的規模の優良企業である。
・・マラソンのスポンサーでも有名である。
従業員は連結で約7,500名、世界190カ国以上に輸出する超グローバル企業である。
同社は元々「東亜医用電子㈱」と云い、1968年に設立された、約50歳の会社である。
・・・1998年にシスメックス㈱に名称変更。
その名が示す通り「東亜特殊電機㈱・・・現「TOA」拡声装置で有名」が発祥のルーツである。
神戸に「西神工業団地」があり、その一角に「シスメックス テクノパーク」がある。
私がそこを見学したのは、今から20年程前であり、その頃は中央研究所?と云う風な名称だったと思う。
もう1社は「グローリー株式会社」である。
金融機関の各種装置、自販機、等のトップメーカーであり、超グローバル企業である。
今では日本を代表する企業なので、誰でも知っているから、詳細は説明するまでもないだろう。
本社は兵庫県姫路市にある。
同社は元々「国栄機械株式会社」と云い、石川播磨重工・相生工場の仕事をしていた「金属加工」を得意とする会社である。
その会社が、意を決して自社製品開発に目覚めた。
「硬貨計数機」と「タバコの自動販売機」である。
(実は、50年程前、私は同社の「技術者中途採用」に応募して合格した)
出社日も決まり、総務の説明を聞いていると、単身寮も無く、通勤費も無しであった。
私は、山崎から下手野まで約1時間のバス通勤が唯一の方法であったので、これが自己負担では耐えられない・・・
そこで、意を決して入社を辞退した。 ・・・そんな経緯がある。
今から約20年前、グローリーの製品展示ルームを見学したことがある。
ここで、一番最初に作って「造幣局」に納入した、製品第一号を見たし、自動販売機も見た。・・・暦年の進化を見たのである。
ここで、2社の詳細を説明することが目的ではないので、もし関心があれば両社のホームページをご覧ください。